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メローネ基地でミルフィオーレの連中と戦ったあのガキが、幻騎士(――そういえば俺も昔戦った相手だ。どうにも薄気味の悪い胸糞悪い相手だった)と戦って手酷い負け方をした、らしい。らしいというのはその場に俺がいなかったからで、勝敗についても戦況についてもアルコバレーノやボンゴレ十代目から直接聞いたのではなく、跳ね馬経由でごく簡潔な内容を聞いただけだからだ。
かつて自分を負かした男、今や曲がりなりにもボンゴレ二大剣豪などと自分と並び称されるようになったあの男のそんな無様な負け方を知って、黙っていられるわけもなかった。十年前から来たと言っても、未来に来てから鍛錬も積んだろうし箱の使い方も学んだはずだ。何より今のあいつらの手元にはボンゴレリングがある。それでいて負けたとはどういうことだと扉を蹴ってアジトを飛び出し、足音高く乗り込んだ日本の地下基地。
そこで、俺は十年の年月を思い知らされることになった。
目の前に姿を見せた、十年前の「ボンゴレ二代剣豪の片割れ」は、想像以上に細く幼いガキだった。顔を見たらまず殴り飛ばして無様な体たらくを罵ってやろうと思っていたが、殴り飛ばすどころか手をあげることも、罵るどころか怒声ひとつあげることも咄嗟に忘れて目の前の「山本武」を見つめた。驚きに見開かれた子供の瞳は、今のあの男が持つ、様々な時間や想いを内包した深みのある色とは違う明るく澄んだいろをしていた。顔つきも体つきも、スクアーロ、と呼びかける声さえもまだ子供の幼さが抜けきらず、少し呆然とした頭で俺は自分の十年前を思い返した。14から24。22から32。同じ十年間ではあるが、そこに流れる時間は本当の意味で等しいものではないのだと、今さらながら思い至った。
「……スクアーロ、」
前に立ち尽くす子供は迷子になったような顔で何か言いかけ、逡巡したように口を噤んだ。常日頃よりずっと低い背のせいで、少し俯いただけで表情は見えなくなった。立ち尽くした体の横では、関節が白くなるほどきつく拳が握りしめられていた。
(――ああ、)
その拳に続く手首の細さに、ふと既視感を覚えた。
十年前、リングをかけた闘いで、最後に自分に差しのばされた手を見ながら思ったことが、またふっと心を過った。
(……子供の、手だ。)
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小話のvs.幻騎士と微妙につながってるようないないような。
山本が負けたと聞いて思わず十年後山本に怒鳴るノリで出てきたのはいいけど
中学生山本を前にしてその小ささとかいろんな意味での純粋さとかにショックを受けるスクアーロとかいいなーと。
十年後のスクアーロと山本がどんな関係だったかなっていうのがあって、その上で32歳スクアーロが中学生山本とどんなことになるか妄想するとほんとたまらん。はあはあ。
多分十年後の二人はすごい対等な位置にお互いいたんじゃないかなーと思います。それがいきなり山本が十年前の中学生の姿で、まだマフィアの世界に引きずり込む前の姿で現れたらきっとスクアーロはえらい混乱するだろうな…。
自分がやったことに罪悪感とかそんなの感じるキャラじゃないのは分かってるんだけど、まっさらな山本を前にしてちくちく心の隅を針で刺されるような思いをすればいい。そんでもってその片側で再度十年前の山本を「こっち側」に引きずり込むことにぞくぞくするような興奮を覚えていればいい。ビバアンビバレンツ鮫。